「きさらぎ駅」　★★★～演出はともかく展開は面白い

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2022』の掲載にあたって」

演出はともかく展開は面白い★★★

恒松祐里

本田望結

莉子

寺坂頼我

木原瑠生

芹澤興人

佐藤江梨子

【あらすじ】

　2004年、ネット掲示板に“はすみ”と名乗る女性が、この世に存在しない“きさらぎ駅”にたどり着いた体験を投稿し話題となった。

　それから十数年後。大学で民俗学を学んでいる堤春奈は、神隠しにまつわる調査の一環として“きさらぎ駅”を卒業論文の題材に選び、投稿者である“はすみ”からの聞き取り調査に成功する。

　春奈は、はすみからの聞き取りをしているうちに、きさらぎ駅へ行く方法に気付き、終電の電車に乗り実践する。

　気付くと電車には数人の乗客と、外は見たことのない風景。そして、停車した駅は紛れもなく“きさらぎ駅”だった―

【コメント】

　懇意にしていたTSUTAYAの閉店に伴い、今年から利用し始めている郵送サービスのTSUTAYA DISCAS。ネットでレンタルしてポストに入れるだけで返却できたり店舗に置いてなかった映画があったりと利点はいろいろとある反面、定額だとレンタルは最大2枚でそれ以降は有料であったり、最新作が順番待ちでなかなか届かなかったりとデメリットも見えてきました。

　そんな中で、観たい映画のリストに登録していたのが本作。その昔2ちゃんねるで大きな話題となった“きさらぎ駅”という所謂“異世界系”の怖い話が題材となっています。今でこそ映画やアニメでも散々擦られまくっている“異世界系”ですが、実話であれ創作であれ、当時は新鮮なお話として類似の話がわんさか投稿されていましたね。“地下のまる穴”とか“時空のおっさん”シリーズとか。

　不思議系大好きな僕なので、本作は劇場公開当初から観たいなーと思っていました。しかしながら作りがいかにもショボそうだったのでスルー、TSUTAYA DISCASでリスト登録して届くのを待っていたんですが、結構な人気作らしくなかなか僕の手に渡ってこない。痺れを切らした僕は、少々お高くつきますがアマプラで個別レンタル（有料）を行い、やっとこさ鑑賞に漕ぎつけた次第です。

　ほほう、なるほど。所詮チープなZ級ホラーと高を括って鑑賞しましたが、これは意外に面白かったですね。きさらぎ駅という題材をかなりヘンテコに脚色したZ級なホラーであることに変わりはないんですが、お話の展開がなかなか凝っているし、ラストの意外な展開とバッドエンドな終わり方がとても良かったと思います。意味不明なホラー演出はともかく物語の展開は面白かったですね。

　先にも書いたとおり、“きさらぎ駅”に関する大筋の話は踏襲してはいるものの、Jホラーの悪いクセなのか、謎の血管やらゾンビまがいのキャラが登場したりグロ描写があったりと、せっかくの異世界というSFスリラー的な醍醐味を台無しにするような演出が数多くあるので、如何なものかな～と思ってはいたんですが・・・（以下ネタバレ、要反転）

　神隠しという伝承との結びつけや、同じくネットで語られているエレベーターで異世界に行く方法との結びつけ、タイムループという概念を持ち込んだあたりは考えたなーと。しかもラスト、主人公の春奈が自分だけ助かろうと、はすみがきさらぎ駅で行った“意図的に仕組んだ間違った”情報をもとにJKを光る扉に行かせたところ、JKのほうが現実に戻ってしまうという意外な展開。結果的に主人公はきさらぎ駅の無限ループにハマってしまうというバッドエンド。春奈は誤った情報のまま記憶がリセットされるため、この先この無限ループから脱することができるのか、という無間地獄の恐怖も味わえる、なかなかに考えさせられる作品でしたね。

　とはいえ、やっぱり個人的には異世界スリラーとしての体を崩してほしくはなかったかなーというのが正直な感想。ヘンテコリンなホラー演出はいらないと感じました。