「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。
これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。
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【あらすじ】
とある町の民家で、認知症の老人と訪問介護センター所長の死体が発見される。
警察で捜査を進めたところ、死んだ所長が勤める介護センターの介護士・斯波宗典が犯人として浮上する。しかし彼は、職場の人たちからも介護家族からも慕われるまじめで心優しい青年だった。
事件を担当することになった検事の大友秀美は、斯波が働く介護センターで41人もの老人が死亡していることを突き止め斯波を尋問する。
斯波はそれを認めるが、“殺人”ではなく“救い=ロストケア”であると主張。同じく介護を必要とする母を持つ大友は、斯波の揺ぎない信念に激しく動揺する―
【コメント】
年度末のクソ忙しい今日この頃、御多分に漏れず僕も残業の連続ですが、そんな時こそライフワークの映画鑑賞で観も心もリフレッシュということで、今回劇場で鑑賞したのが本作。
長澤まさみ&松山ケンイチのW主演である本作、昨今の日本の高齢化社会をテーマにしたヒューマンミステリーということで、高齢の親を持つ僕自身にとっても身近なテーマ。見るからに重そうな内容なのでリフレッシュするには不向きな作品ですが、やはり面白そうだしネットでも評判がよろしいので、さっそく「立川キノシネマ」に足を運んだ次第です。
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(C)2023「ロストケア」製作委員会
まずこの本作、政治家たちに是非とも観ていただきたい。
国の財源確保のための少子化対策もよろしいが、いま日本の民間では高齢化社会に伴う介護問題で疲弊している。介護職員の圧倒的な人手不足、介護施設やケアの不足や高額の老人ホーム。働き盛りの大人たちは親の介護に振り回され、身銭を削り自分の生活もままならないうえに国や地域からの援助も十分ではない。こういう現状に加え、介護職員による老人虐待などの問題も多く発生している。こういう状況下で、この先はもっと高齢化が進み、さらに問題は加速していく。
本作は、そういった現代の高齢化社会をとにかく直接的に鋭くえぐった問題提起作品であり、より多くの国民が観るべき作品であると思います!僕自身、親の高齢化に直面しているだけに、身近なテーマとして深く考えさせられた作品でしたね。
そんな僕の本作の感想は以下の3つです。
1.高齢化社会の現代を鋭くえぐる良作
2.長澤まさみと松山ケンイチの演技が光る!
3.だけどもっと凄いのは柄本明!
本作の凄さは現代の日本の現状を鋭くえぐった重いテーマであるとともに、出演している役者たち、とりわけ主演の長澤まさみと松山ケンイチの熱演が更なる作品の締まりにもつながっています。
特に検察室での長澤まさみと松山ケンイチが対峙するシーン、“ロストケア=救い”の名のもとに42人もの老人を殺害した松山ケンイチが介護の現状を突きつけ、自分の行動が善であることの主張に、他人が人の命を奪って良いわけがないという一見正しいようで実のところステレオタイプで現状を見ていない理想論的な主張が圧倒され心が揺らいでしまうシーンは圧巻の一言。本作の名シーン中の名シーンで、松山ケンイチの主張を否定できる人間はいないはず。いるとするならばかなりの世間知らずの人間です。
名シーンと言えば、松山ケンイチとその親である柄本明との介護のシーン。本作の中でも屈指の激重で苦しいシーンであり、辛過ぎて涙が止まらない人も多いと思います。
このシーンの凄さは、ひとえに名バイプレーヤーである柄本明のリアル過ぎる演技に尽きる。脳梗塞で半身不随となったうえに認知症も患ってしまった老人の演技はとにかくリアル過ぎて凄い!
惜しむらくは、結果的にラストで“家族の絆”というありきたりなところに着地した気がしてしまったのが少し残念。松山ケンイチの主張を僕はどうしても否定できなかっただけに、もっと問題提起をした終わり方としてほしかったなーと感じましたかね。
とはいえ、ラストシーンも心震わせるシーンであったことは間違いないです。
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(C)2023「ロストケア」製作委員会
本作で松山ケンイチが言ったセリフ「人間は“見える・見えない”ではなく“見たくないものは見ない”」といったニュアンスを話していましたが、本作こそこれが当てはまると思います。現実から目を背けるのではなく、現在進行形で高齢化が進みこういった問題が起こりうる中、より多くの人が本作を鑑賞して、これが日本の現状なんだという問題意識を持ってほしいと思ってやみません。
どんなに頑張っても人間は歳を取る。五体満足で人生を全うできる人なんてほんの一握りで、両親そして自分自身も介護という現状に直面する。その現状がいかに過酷なものとなるか国民一人一人がその問題意識を持たなくては高齢化の波に立ち向かうことはできないと改めて感じる作品でした。
【2023年度 Myランキング】(3/25時点)
本作は、本年度のベスト10中2位(暫定)にランクイン。
月末週が山場だな。
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ★★★★☆
2位:ロストケア ★★★★
5位:パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 ★★★☆
6位:非常宣言 ★★★☆
9位:#マンホール ★★★☆
10位:
次点:
(ワースト)… ★★☆以下が基準
1位:
2位:
3位:
<その他ランク外一覧>
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