※※※ 注意 ※※※ 「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
「『シネマ報告書2017』の掲載にあたって」
“信仰とは何か?”を問う強烈作★★★★☆
Copyright :(C) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved. (2016年/アメリカ/162分/Silence) 【 製作・監督 】マーティン・スコセッシ 【 原作 】遠藤周作【 出演 】アンドリュー・ガーフィールドアダム・ドライバー浅野忠信キアラン・ハインズリーアム・ニーソン窪塚洋介イッセー尾形塚本晋也小松菜奈加瀬亮笈田ヨシ
全てのスタッフ・
【あらすじ】
幕府による厳しいキリシタン弾圧が行われている江戸時代初期の日本。
そんな日本でキリスト教の布教活動に情熱を注いでいた宣教師フェレイラが捕らえられ棄教したとの報告を受け、彼の弟子ロドリゴとガルペは、日本人のキチジローの案内で長崎にたどり着く。
長崎には幕府によるキリシタン弾圧の目をかいくぐった“隠れキリシタン”たちがひっそりと住んでいたが、幕府による弾圧とキチジローの裏切りにより、ロドリゴたちも捕らえられてしまう。
長崎奉行から村人の命と引き換えに棄教を命じられるロドリゴ。信仰か目の前の命か、追い詰められる彼にさらに過酷な現実が待っていた―
【コメント】
さて、今年最初の目玉ともいえる本作。映画ファンなら知らぬものなどいない巨匠マーティン・スコセッシ監督による超大作の登場です。
しかも今回は、日本を代表する作家・遠藤周作原作による、江戸時代初期を舞台としたキリシタン弾圧を題材ににした作品ということで、相変わらず原作未読の僕としては、一体全体スコセッシ御大がどう作っているのかという興味もあり、162分という長丁場にもめげず、今回は「吉祥寺オデヲン」まで足を運んだ次第です。
見るからに堅苦しそうな映画でありながら、かなりの観客が押し寄せていましたな。
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“信仰とは何か?”を問う強烈作
凄ぇ・・・凄ぇぞこれ!早くも2017年の最高傑作と称されるにふさわしいくらい強烈な映画を観てしまった!改めて巨匠マーティン・スコセッシの凄さ恐ろしさを感じた一本でしたね!御大の原作に対する思い入れがふんだんに詰め込まれた、近年のスコセッシ作品の中では断トツの完成度だったと思います!
まず、162分の長丁場でありながら、全く目を離すことなくストーリーに入り込めることができる。というよりも、これから彼らは一体どうなってしまうんだろう?といった展開に固唾を吞みながら見入ってしまう。しかも、海外の監督が描いたとは到底思えない江戸時代の日本の描写。その昔よくあったヘンテコリンな日本とは全然違うリアルさ。それどころか、日本人監督ですらこれほどの再現ができる人はいないでしょう。もっと頑張れよ日本人監督。
そして何よりも、“宗教とは何か?”、“信仰とは何か?”、“信じる思いだけで人は救われるのか?”という深い深いテーマが観客たちに重くのしかかってくる。ストーリーが至極単純でありながら、自分なりの答えを得るために観る者の頭をフル回転させてしまう演出の巧みさ。
なかなかにエグい拷問シーンもあるので、思わず目を背けてしまうシーンもありますが、映画が終わって、僕も含め誰もが席を立たず、無音のエンドロールを眺めていましたね。観客を放心状態とさせるくらい、本作からは凄さが伝わってきます。スコセッシ御大に拍手!
日本の役者の健闘ぶりが凄い!
日本が舞台なので、もちろん本作には皆が知っている日本人の役者が多数出演しています。
先に観た『
新宿スワンⅡ』とはまた違う浅野忠信の飄々としたお役所人も良かったし、自分可愛さのためにパードレを裏切ってはチョロチョロとうろつくキチジロー役の窪塚洋介も良い。
しかし、本作のMVPは何といっても塚本晋也とイッセー尾形、この二人につきます。少しの迷いもなく、一途にパードレそしてキリスト教に心酔する心の清さと、海に磔にされる拷問に耐える姿。あまりの一途さに観てるこっちは目を背けてしまいたくなる。本作のハイライトになる名シーンですね。
そして、素っ頓狂な声を出して得体のしれない恐ろしさを醸し出す筑後守イッセー尾形。かなりのインパクトでしたね。本作でのイッセーの存在感は随一と言っていいでしょう。
その他、一言もセリフがなく斬首されて散っていった加瀬亮はあっけなさ過ぎましたね~まあそれでもスコセッシ御大の映画に出られただけでも名誉なことだと本人は感じていることでしょう。
とにかく、本作での日本の役者はかなり健闘していましたね。
本作を観て思う日本
ぶっちゃけ、本作はいろんな見方があると思います。先に書いたような、宗教とは?信仰とは?弱者の救済とは?といったところでしょうか。
僕も含め、現代日本は海外ほど熱心に信仰心を持つ人は少ないと思います。冠婚葬祭は誰でも行いますが。本作を信仰心の強い海外の人が観たらどう感じるのかも、興味深いところ。つまり、信仰心の厚い人と薄い人では感想が異なると思うわけです。
ただ、本作を観て「日本は酷い」「日本は残酷だ」と思う人は、本作の見方が足りないと思いますね。本作を観てわかるのは、キリスト教布教を行うには、日本という国はあまりにも異質で成熟され過ぎていたということ。この時代で、日本はすでに政治・経済・文化が完成していたんですね。ゆえに、新しい信仰を普及させる隙が全く無かったということです。
井上筑後守をはじめとした長崎奉行所の人間は、実は「キリスト教は敵!」といった明らかにキリスト教を敵視した見方は決してしておらず、「お上の決め事だからさ、ちょっと踏み絵しちゃえば許されるんだよ。だからちゃっちゃと踏んじゃって自由に生きな」といった言い方をしているんです。要するに“お役所仕事”、人間ひとりひとりの信仰心を根底から変えることはできないと一番わかっていたうえでの弾圧だったんでしょう。
海外の人に果たして“お役所仕事”が伝わるかどうか定かではありませんが、少なくともそれを理解して本作を作り上げたマーティン・スコセッシ監督はやっぱり凄い!これに尽きます。
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【2017年度 Myランキング】(1/22時点)
本作は、本年度のベスト10中1位(暫定)にランクイン。
久々の吉祥寺。
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:沈黙 -サイレンス- ★★★★☆
2位:
3位:
4位:
5位:
6位:
7位:
8位:
9位:
10位:
次点:
(ワースト)… ★★☆以下が基準
1位:
2位:
3位:
<その他ランク外一覧>
本能寺ホテル新宿スワンⅡ
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