「共謀家族」　★★★★～エンタメに開眼しつつある中国映画

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2021』の掲載にあたって」

エンタメに開眼しつつある中国映画★★★★

（2019年／中国／112分／誤殺 Sheep Without a Shepherd） 【　監督　】サム・クァー【　出演　】

シャオ・ヤン

タン・ジュオ

ジョアン・チェンフィリップ・キョンチョン・プイ

【あらすじ】

　幼少時に中国からタイに移住したリー・ウェイジエは、インターネット回線会社を経営しながら、妻や高校生の長女ビンビン、幼い次女と幸せに暮らしていた。

　ある日、サマーキャンプに出かけたピンピンが、警察局長の息子であり不良のスーチャットに睡眠薬を飲まされて暴行され、その様子を撮影されてしまう。動画をネットに上げると脅されたピンピンは、スーチャットと揉み合いになり彼を殺害してしまう。

　映画マニアでもあるリーは、家族を守るため映画のトリックを応用し完全犯罪を計画する―

【コメント】

　さて、今回TSUTAYAで新作を物色していたところ目にとまったのは本作。7月に劇場公開されていたようですが、まったくのノーノーマーク作品です。

　タイトルやパッケージから韓国映画だなと勝手に判断して手に取ったものの、蓋を開ければ中国映画だったじゃあーりませんかと。まあ韓国映画だろうと中国映画だろうと僕的には製作国はどうでもよい部分なので、とにもかくにも面白そうだったので鑑賞してみた次第です。

　面白い！面白いぞこれは！これは思わぬ掘り出し物、今年劇場公開されたその他作品の1本として埋もれさせるにはもったいない良作の中国製サスペンス映画ですよ。韓国映画のクオリティは言わずもがなですが、ここへきて中国映画のクオリティもこれほどまでに高まってきているとは思いませんでしたね。市場を世界標準に合わせてきたのか、中国映画もエンタメ作品に開眼してきたのかなと感じさせる作品でした。

　愛する家族を守るため、平穏で幸せな日々を守るために、海外映画で培った知識をフル動員させ完全犯罪を目論む、どこにでもいる優しい父親。「へ～、中国でも『ショーシャンクの空に』って観られるんだ」というちょっとした驚きもありつつ、映画の知識だけでここまで犯罪を隠し通せるのかとか、ちょっとムリあるな～という部分もありつつ、さすがに警察横暴過ぎじゃねーのという部分もありつつも、「うわ～バレるバレる、どうするんだ！？」と観ている人をグイグイと引き込んでハラハラさせるテクニックはとても秀逸で目が離せなくなる。そんなサスペンスフルな展開がありつつも、家族の絆や庶民たちとの交流や信頼というドラマもスパイスになっていて非常に見応えがあります。タイの警察が果たしてこれほどに傍若無人なのかどうかはさておいて、あくまで警察を“悪”に仕立てることで、より一層父親を応援する気持ちになるわけです。そういったところが非常にうまく出来ていて、ヒューマンミステリーとして十分に楽しめる作品でしたね。

　舞台はタイでしたが、なんとなーく中国の体制に対する皮肉も交じってるんじゃないかなーという気がしないでもありません。