「怪物の木こり」★★★～三池崇史監督の新たなジャンルの挑戦作

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2023』の掲載にあたって」

柚希礼音

堀部圭亮渋川清彦染谷将太中村獅童

【あらすじ】

　若き敏腕弁護士の二宮彰。彼の本性は、自分の利益のためなら殺人をも厭わない冷酷非情なサイコパスであり、同じサイコパスである外科医の杉谷とともに利益を共有していた。

　そんな中、不気味な仮面を被った殺人鬼が斧で相手の頭を割り脳を奪い去るという連続猟奇殺人事件が発生、二宮もそのターゲットにされる。

　なぜ犯人は脳を奪い二宮を標的にしたのか。警視庁のプロファイラーである戸城は、事件の真相を調査していくうちに、二宮自身の過去が明らかになっていく―

【コメント】

　2023年も12月に突入し、今年の映画鑑賞もいよいよ最終段階。この歳になると相変わらず1年が早すぎるなーと感じる今日この頃。そんな時の残酷さをしみじみと感じる週末、今回劇場で鑑賞したのが本作です。

　久しぶりの三池崇史監督の新作で、KAT-TUNのメンバー亀梨和也君主演によるサイコパススリラーものということで、前々から劇場の予告編で観ていて面白そうだなと思っていたし、なんだかんだで三池監督作品は嫌いじゃないので、さっそく土曜のレイト「立川シネマシティ」に足を運んだ次第です。

　うん、なるほどね。サイコパスがメインのスラッシャーなスリラーでありつつ、犯人当てのミステリー的面白さも併せ持った作品。脳チップなるものがイマイチ現実的じゃなかったので気になるところでしたが、なかなかに楽しめましたね。原作の映画化なのでそれなりにしっかりした作りになっているのだと感じましたが、これまでにない三池崇史監督の新たなジャンルへの挑戦といったところでしょうかね。

　そんな僕が感じた本作の感想は以下の3つです。

１．スラッシャースリラー＋犯人当てミステリー

２．三池崇史監督の新たなジャンルの挑戦作

３．中村獅童のキャラが際立つ

　サイコパスものと言えば、ひとりのサイコパスな人間が周りの人間をエグイ手段で殺しまくるというのがセオリーですが、本作は主人公をはじめとしたサイコパスが何人も登場し、互いに命を狙い合うというこれまでになかった構図。主人公のサイコパス亀梨君と覆面を被ったサイコパスとの戦いというのが一つのミソになっていて、この覆面サイコパスが一体誰だ！？という謎解きミステリーになっているわけです。こいつかもしれない、いやあいつかもしれない、でも実はあいつだった、みたいなスカシやどんでん返しもあってミステリーとしては面白いと思いましたね。まあ、原作がよく考えられているということでしょう。

　これぞれのキャラも際立っていて、サイコパス亀梨君もさることながら、飄々としたサイコパス染谷君の不気味さも良い。清楚な吉岡里帆も相変わらずの可愛らしさだし、プロファイラー菜々緒の野暮ったいながらもシャープな美形もお気に入り。

　だけど、本作のMVPはやっぱり中村獅童のキャラ。この人のオーラは他の出演者の追随を許さないくらい飛びぬけた存在感で、多くは登場しないもののキャラは本作でひときわ際立っていたと思います。改めて凄い役者だと感じましたね。