「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。
これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。
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中野有紗
麻生祐未
石川さゆり
田中泯
三浦友和
【あらすじ】
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く寡黙な男・平山は、同じ時間に起き、真面目に清掃をこなし、仕事が終わったら銭湯に行き、行きつけの居酒屋で食事をし、夜は眠くなるまで読書する同じ毎日を繰り返していた。
しかし、平山にとってはそれが最高の幸せの日々。同じ日を繰り返しているようで、平山にとっては毎日が新鮮な一日だった―
【コメント】
今回劇場で鑑賞した作品は、昨年末に公開され話題となったビム・ベンダース御大監督&役所広司主演による日本を舞台とした本作。カンヌ映画祭では役所広司が2人目の日本人役者として見事男優賞に輝き、米アカデミー賞にもノミネートされるなど数々の賞レースを席巻しつつある作品です。
これらの話題を受け、僕的にはちょっとタイミングを逃してしまったためスルー気味ではあったんですが、年末公開でありながら昨年度の「5ちゃんねるが選ぶ「★投票★ 今年のベスト映画&ワースト映画 2023」結果発表」でも第3位に輝くなどもあり、これはちょっと観ておく必要があるなと「立川キノシネマ」に足を運んだ次第です。
さすがの話題作、公開から1カ月経った今でもほぼほぼ満席の盛況ぶりでした。
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(C)2023 MASTER MIND Ltd.
本作の主人公・平山は人生を悟った人間なんだと思う。
「起きて半畳寝て一畳」ということわざがあるが、人間は立ち上がっていれば半畳、横になって眠れば一畳もあれば十分、どんなに金持ちでも権力を持った者でも平民でもそれは変わらない。つまり、持つべき物事の限度を知り必要以上は求めるものではないという意味で、主人公である平山はまさに自分自身の限度をわきまえ、少ない収入でもボロアパートでも部屋に物が無くても十分に幸せをかみしめることができる、いわば現代に生きる仙人とも言うべき存在なんだと思う。
一時期、断捨離なんてものが流行ったことがあるが、そんな流行りの“ファッション断捨離”なんぞではなく、本当に必要最低限の生活というのが平山の生き方。根城としているボロアパートだって人一人が寝られ雨風をしのげれば十分すぎる広さ、風呂がついてなければ銭湯に行けばいい、ご飯を食べられる場所なんて巷にいくらでも溢れている、部屋には大好きな音楽テープと小説と植物があれば十分。例え給料が安くても、公衆トイレ掃除という皆がやりたがらない仕事にまい進することで社会に貢献している。何より、同じ日々の繰り返しのようで、毎日は新しい出来事で溢れかえっている。ほら、毎日カメラに収めている木漏れ日の写真だって毎回違うだろう、と。日々を楽しみ、時に怒り悲しみ嫉妬に苦しみ、だけどそれすらも生きる幸せとして味わっている。これ以上自分の人生に一体何が必要なのか、最高に幸せじゃないか。それを平山は不言実行で現代に生きる人たちに示す存在なのだと思った。
トイレには位の高い神様が宿ると言われているが、平山は本当に人としての生き方というのを達観し神の域まで達した存在なのだろうと思う。
1.平山は現代に生きる仙人
2.足るを知る者は富む
3.幸せはそこらじゅうに溢れている
「足るを知る者は富む」。自分の身の丈に合った生き方を出来る人間は、たとえ経済的には貧しくとも精神的には満たされ幸せであるということ。
平山の過去に何があったのかは本編ではぼかされているので分からない。だけど、彼が今の生き方に至った経緯は想像に難しくない。彼は裕福だったのだ、きっと。それこそ誰もがうらやむくらいの経済力と確固たる地位を築いていたに違いない。だけどそれを自ら捨て貧しい生活に身を落としている。
平山は悟ったのだ。経済的に豊かでも、精神は全く満たされないということを。そして分かったのだ。心を満たしてくれる幸せなんてそこらじゅうに溢れているということを。
考えてみれば仏教の教えを説いた釈迦も裕福な家庭で生まれ贅沢の限りを尽くしたが、それを自ら捨て過酷な道を歩むことにしたと言われている。平山はきっと釈迦と同じように人生の何たるかに目覚め、これからも生きる喜びを嚙み締め、満たされた人生を歩んでいくのだろう。
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(C)2023 MASTER MIND Ltd.
2時間の本編を通し、これほどまでに何も起こらない平凡な一市民を描いた映画は観たことない。だけど、これほどまでに自分自身の胸に刺さり、生き方を考えさせられる作品は観たことがない。ビム・ベンダース監督の早熟しきった映像美と、主役の役所広司の恐ろしいほどの演技力にただただ脱帽せざるを得ない。海外の監督でありながら、日本映画よりも日本映画らしい。
ラストシーンの役所広司の泣き笑いの長回しは、きっと平山が感じた感情に震わされながら、それをも生きる喜びを感じ「俺は生きている、なんて素晴らしいんだ!」と幸せを感じた瞬間だったに違いない。これをセリフなしで表情だけで表現できる役所広司は凄いとしか言いようがない。
自分自身が熟年期に突入している中で本当に心振るえる作品でした。最高、素晴らしかったです。
【2024年度 Myランキング】(1/28時点)
本作は、本年度のベスト10中1位(暫定)にランクイン。
残業の連続。
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:PERFECT DAYS ★★★★★
3位:カラオケ行こ! ★★★☆
4位:
5位:
6位:
7位:
8位:
9位:
10位:
次点:
(ワースト)… ★★☆以下が基準
1位:
2位:
3位:
<その他ランク外一覧>
エクスペンダブルズ ニューブラッドコンクリート・ユートピアアクアマン 失われた王国ある閉ざされた雪の山荘でLift リフト(未)
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