「恐怖の報酬」★★★～名作のリメイクは慎重に

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2024』の掲載にあたって」

名作のリメイクは慎重に★★★

（2024年／フランス／106分／Le salaire de la peur） 【　製作・監督　】ジュリアン・ルクレール 【　出演　】フランク・ガスタンビドゥ

アルバン・ルノワール

ソフィアン・ザマニ

アナ・ジラルド

バカリー・ディオンベラ

アストリッド・ホウェットノール

【あらすじ】

　もともとパリで運転手だったフランクは、移住した地でクーデターが起こってしまい、母国へと帰るため兄のアレックスとともに犯罪に手を染め金を手に入れようとするもアレックスだけが刑務所に収容されてしまう。

　ある時、国内で油田の火災が発生、これを消すためには大量のニトロを使った爆風が必要だった。フランクは石油会社から、兄の釈放とパリへの国外脱出を条件に、大量のニトロを現地に運ぶ仕事を請け負う。

　フランクとアレックス、そしてNGO職員のクララらは大量のニトロを積んだトラックを運転し、危険な悪路とゲリラが潜む道を進むことになる―

【コメント】

　今般、動画配信サービス「Netflix」でちょっと話題になっているオリジナル映画の本作を鑑賞。

　本作は、1953年にフランスで製作されカンヌ映画祭グランプリに輝いているイブ・モンタン主演の同名映画のリメイク、そして1977年に巨匠ウィリアム・フリードキン監督・ロイ・シャイダー主演でもリメイクされている作品です。

　個人的にはだいぶ昔ですがどちらも鑑賞済み、とりわけモノクロのフランス版オリジナルのインパクトが未だに記憶に鮮明に残っていて、イブ・モンタンなんて懐かしいなーと思いつつ、あの救われないラストシーンが印象的でした。

　そんな名作を、製作国であるフランスが現代によみがえらせたということで、ちょっと面白いかもと鑑賞してみた次第です。

　うん、なるほどね。まあまずまずといったところでしょうか。

　クーデターとか反政府ゲリラとか登場してドンパチするあたり、フランス版オリジナルというよりは、1977年のフリードキン版に寄せている感じがしますかね。とはいえ、ニトロを油田火災の地まで運ぶという設定以外はほぼほぼオリジナルで、設定を借りただけの普通のアクション映画といったところですかね。

　そんな僕が感じた本作の感想は以下の3つです。

１．設定を借りただけの普通のアクション映画

２．オリジナルには遠く及ばず

３．名作のリメイクは慎重に

　ただの一滴を地面に落としただけで物凄い爆発を引き起こす液体ニトロ。これをトラックいっぱいに詰め込み、何百キロもの悪路を慎重に走りながら油田火災の地まで運ぶというまさに命がけのミッション。舗装などされていない砂利や砂だらけの道やぬかるみ、カーブだらけ崖っぷちだらけの道を一滴もこぼさずに走りきらなくてはならない。一滴こぼしたら最後、トラックごと大爆発を引き起こし命の保証はない。

　本作の面白さってまさにそんな悪路を命がけで走り抜けるシンプルかつスリリング、サスペンスフルなところにあるわけで、そこに命を懸けた運転手それぞれのドラマがスパイスとして挟まれてさらに深みを増してくるわけですが、残念ながら本作はそんなスリリングなところよりゲリラとのカーチェイスや銃撃戦に重きが置かれてしまって、せっかくの設定が単なる凡百なアクションものになってしまっている所はもったいないところ。

　正直、フリードキン版のほうもそれほど印象に残ってないんですよね、本作とおんなじ感じだったので。やっぱりイブ・モンタン主演のオリジナルには遠く及ばずといったところが僕の本作の感想です。