「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
AIの是非を問う哲学的SFスリラーの佳作
★★★★
(2015年/イギリス/108分/Ex Machina)
【 脚本・監督 】
アレックス・ガーランド
【 出演 】
ドーナル・グリーソン
アリシア・ビカンダー
オスカー・アイザック
ソノヤ・ミズノ
【あらすじ】
世界最大の検索エンジンを誇るインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、社長のネイサンが所有する人里離れた山奥の僻地に別荘に1週間滞在する抽選に当選する。
ネイサンと対面したケイレブだったが、ネイサンの目的は人工知能AIのチューリングテストをケレイブに実施してもらうことだった。
ケレイブの前に現れたロボットは、美しい女性型“エヴァ”。ケイレブはエヴァと会話し、なんとも不可思議なチューリングテストを実施していくのだが―
【コメント】
さて、本作は低予算ながら今年度の米アカデミー賞の視覚効果賞を見事に受賞しており、海外ではカルト的な人気を誇っているとのこと。
1年以上のインターバルを置いて、劇場館数が少ないながらやっとこさ日本で公開ということで、ちょっと面白そうだなと渋谷「シネクイント」に足を運んだ次第です。
AIの是非を問う哲学的SFスリラーの佳作
いやこれは・・・ジワジワきますよ、これ。IT技術が飛躍的に進化する中、いわゆる人工知能“AI”という存在の是非を問う哲学的なSFスリラーの佳作ですね。
先に書いた視覚効果賞の名に恥じない技術もさることながら、そんなことよりも映像で淡々と静かに展開されるストーリーとその奥深いテーマ性のほうが強烈で、なるほどカルト的人気を誇る理由が分かる気がします。
登場人物はわずか4人、有能なIT社長の家でのみ繰り広げられる密室劇で、特段の派手な演出もない映画なんですが、とにかくグイグイと惹きつけられて、これから一体どうなるのか?と目が離せない、近年のSFスリラーでいけばダントツの出来だと思います。
“SF映画”で括ってはいけない、これは近い未来に起こりうる現実
SFスリラーとはいえ、僕は本作を“SF映画”といった非現実的な作品として括ってはいけないと思っています。これは確実に近い未来に起こりうるリアルな現実なんじゃないかと。
人工知能は昨今のニュースでも話題になっており、かのスティーブン・ホーキング博士が警鐘を鳴らすまでに技術は人間と同等のそれに近づいているといえます。
つまりは、近い将来必ず人間と同等の知能を持つロボットが誕生するということ。そうなったら世界は一体どうなるのか、人間が人工的に人間を作る世界が来るとどうなるか。楽しみであると同時に、それは恐ろしいことなのかも知れません。
「意識とは何か?」
昨年、『チャッピー』というSF映画でもありましたが、いわゆる“意識とは一体何か?”というのがテーマにあると思いますね。
意識とは人間だけのものなのか、人工知能に意識はあるのか。意識を持ち考え行動する人工知能に人権は発生するのか。本作からは、そんな近い未来に起こりうる世界への警鐘を与えてる気がします。
生活に根付いたインターネットの恐ろしさ
本作で恐ろしいのが、今や生活に欠かせなくなったインターネット。
調べたいこと、興味があることは皆ネットの検索エンジンで検索するという考動はもはや当たり前になっていますが、もしそれがどこかで蓄積されていたら?という部分にも触れています。
つまり、各個々人が調べた検索ワードだけでその個人の人間性が分かってしまうということなんですね。その人の趣味趣向、タイプの女性や性癖までも検索ワードであからさまになってしまう。
もしかしたら、もうすでにそういうことをデータベース化している企業があるかもしれない。それが人工知能に組み込まれたとしたら、一見でその人がどういう人間なのかばれてしまう。
インターネットとは便利なようで、使いようによってはこんなに恐ろしいものになってしまうということです。
これからどうなる、AIのある世界
そんなわけで、本作は近年のSFスリラーとしてはかなりの高水準の映画だと思います。
本作のラストは、人工知能を持つロボットが世界に飛びだすところで終わっていますが、これはつまりAIのある世界はもう間近であるということを伝えているんだと思います。
AIが世に放たれたら世界は一体どうなるのか、人間はAIとどう向き合っていくのか。本作の問題提起は、ITが進化し続けるリアルな現実に一石を投じていますね。
【2016年度 Myランキング】(6/6時点)
本作は、本年度のベスト10中4位(暫定)にランクイン。
早く来い来い夏ボーナス。
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:シビル・ウォー キャプテン・アメリカ ★★★★
2位:オデッセイ ★★★★
3位:アイ アム ア ヒーロー ★★★★
4位:エクス・マキナ ★★★★
5位:マジカル・ガール ★★★★
6位:HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス ★★★★
7位:さらば あぶない刑事 ★★★★(思い出補正あり)
8位:デッドプール ★★★☆
9位:ボーダーライン ★★★☆
10位:ヘイトフル・エイト ★★★☆
次点:殿、利息でござる! ★★★☆
スポットライト 世紀のスクープ ★★★☆
ズートピア ★★★☆
(ワースト)… ★★☆以下が基準
1位:セーラー服と機関銃 -卒業- ★★
2位:X-ミッション ★★☆
3位:信長協奏曲 ★★☆
<その他ランク外一覧>
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