「ミュージアム」　★★☆～『セブン』の茶番劇

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2016』の掲載にあたって」

『セブン』の茶番劇★★☆

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【　出演　】小栗旬尾野真千子野村周平丸山智己田畑智子市川実日子伊武雅刀大森南朋松重豊妻夫木聡

【あらすじ】

　とある街で猟奇殺人事件が多発、事件はいずれも雨の日に起きており、現場には謎のメモが残されていた。

　妻と一人息子と別居中で荒れ気味の沢村刑事は、部下の西野とともに捜査にあたり、容疑者として、カエルのマスクを被った“カエル男”が捜査線上に浮かびあがってくる。

　カエル男を追う沢村だったが、捜査を進めるうちに妻と息子が狙われていることがわかり、単身で行動し始める。そして、いつしかカエル男に沢村は追い詰められていく―

【コメント】

　さて、さんざん劇場で予告編を観ていた本作。原作未読なので、ちょっとエグそうな猟奇スリラーものだなという知識しか持っていませんでしたが、ちょっと面白そうだなという興味もあり、いつもの「立川シネマシティ」に足を運んだ次第です。

『セブン』の茶番劇

　本作を観て真っ先に思い出したのが、デビッド・フィンチャー監督の名作である『セブン』ですね。意識していたかどうかは定かではありませんが、僕は真っ先にそれが思い浮かびました。

　とはいえ『セブン』の完成度とは程遠い、正直言って茶番劇を見せられた感が否めなかったですね。猟奇殺人シーンの映像や終盤の展開などエグさはなかなかのものでしたが、いかんせん主人公が刑事のくせにムチャやり放題、暴れ放題、大声出し放題で冷静さを欠きすぎなので、全然感情移入できない。もうちょっと腰据えて捜査できないものかと言いたくなる。周りの刑事たちもまたしかり。口ゲンカしてないで捜査せーよ。

　“表現者（アーチスト）”と自負するカエル男の存在も、結局いかにもな存在感を超えることはできなかったのも残念なところ。猟奇殺人鬼に理由は必要ないかとは思いますが、自分は芸術で人殺してますよー頭おかしいんですよーどうですかみなさーんというアピールが伝わってきて非常に興ざめ。殺し方も極めてマンガチックで、ただただ残虐性をアピールしているだけの代物。

　話の筋は決して悪くないし、ウェットな雰囲気もグッド。うまく作ればかなりの衝撃作になったはずなのに、いろいろとツッコミどころが多くて感情移入が出来なかった映画でしたね。

小栗旬＆妻夫木聡ら豪華俳優陣の熱演も虚しく・・・

　そんな映画だったもんで、小栗旬や妻夫木聡、尾野真千子といった豪華キャストの熱演も虚しく空回りしているように感じます。

　小栗旬も走り回ったり車にひかれたり大暴れしたり大声出したり泣き叫んだりとかなり力が入っていましたが、肝心のストーリーがダメダメなので全然入ってこない。妻夫木の猟奇殺人鬼もメイクしたり声色を変えたりと空恐ろしく演じていましたが、それもマンガの域を超えておらず逆に興ざめ。

　役者の熱演も、やっぱりしっかりしたシナリオがあってのことだと改めて感じましたね。

冗長な演出が目立つ大友啓史監督の悪いクセ

　まあ、結局のところ本作の脚本・監督である大友啓史が悪いということになると思いますが、先に観た『秘密 THE TOP SECRET』でも感じた、クライマックスに行くにしたがって冗長が過ぎる展開がなんとも悪いクセだなーと。

　最初は非常にテンポが良くなんだかんだで飽きさせないんですが、沢村が監禁されたあたりから随分とテンポが遅くなりとてもまどろっこしい。そして、事件解決後もダラダラと話が続くので「まだ続くのかよ！」と言いたくなる冗長さもいかがなものか。

　本作のラストシーンも意味がありそうで、よくよく考えると全然関連性がなく意味がない。これが宣伝文句の「最悪のラストを期待する」なのか。

　そんなわけで、いろいろと見直してほしい部分が満載の日本版『セブン』でしたが、ちょっと猟奇殺人をはき違えているような感じが否めません。たんなる残虐性をウリにするのではなく、もっとリサーチして奥深さを見せてほしいもんです。