「アイ、トーニャ史上最大のスキャンダル」　★★★☆～真実か否かなんて問題ではない

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2018』の掲載にあたって」

真実か否かなんて問題ではない★★★☆

【　出演　】マーゴット・ロビー
セバスチャン・スタン
アリソン・ジャネイ
ジュリアンヌ・ニコルソン
ポール・ウォルター・ハウザー

【あらすじ】

　90年代に活躍したフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディング。

　毒のある母親に育てられたトーニャは、4歳からスケートを始め、天賦の才能と努力によりメキメキと上達、1991年、続き史上2人目となるトリプルアクセルに成功し、1992年アルベールビルオリンピック代表選手に選出される。　

　しかし、最大のスキャンダルとなる“ナンシー・ケリガン襲撃事件”によって、トーニャのスケート人生は転落の一途を辿っていく―

【コメント】

　2018年もあと1週間少々。本ブログの2018年Myランキングも大詰めということで、今年最後となるであろう行きつけのTSUTAYAに行っていろいろと物色した結果、手に取ったのが本作。

　本作も、５ちゃんねる映画一般・8㎜板「★投票★今年のベスト映画＆ワースト映画2018」の投票においてベストに挙げている投稿者が多く、これは観ておこうと手に取った次第です。

　いやでも、今年も取りこぼし映画が色々あったな～

　いやいや、これは確かに面白い。かつて世間を沸かせた最大スキャンダルの“ナンシー・ケリガン襲撃事件”。果たしてこれが真実なのかウソなのか、お騒がせフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を紐解きながら、民衆心理をくすぐったちょっと社会派な実録ドラマだったと思います。

　本作は、トーニャと彼女の周りを囲む関係者から綿密なインタビューを行い、それを基に作られた作品で、冒頭に早々と「言いたいことは多々あるでしょうが～」みたいな字幕からスタートするところが面白い。真実か否かは観客次第ですよと言いたいのでしょう。

　今でいう毒親と呼ばれるふてぶてしいトーニャの母親に育てられ、そんな母親に反発しつつ世界のフィギュアスケーターに成長するも、絶対的な自信という暴慢さと、いつしか母親と似たような生き方に成り果て、ナンシー襲撃の首謀者として最後はフィギュアスケート界から永久追放されてしまう。実に波乱万丈な人生です。

　しかしながら本作は、ただただトーニャとその関係者を基にしたストーリーではなく、トーニャ・ハーディングという世間の嫌われ者を仕立て上げることでアメリカの体質に問題提起しているわけです。ラストにトーニャが語ったセリフがまさにそうで、アメリカはやたらめったらと敵を作りたがる、敵を作ることで国の平和と地位を確保しているといっているわけです。

　トーニャが語った本作が真実か否かは結局われわれ第三者には分からない。真実なんて誰にも分からないわけです。それが真実か否かは問題ではなく、国民一人一人が無責任に嫌われ者を仕立てて自分のアイデンティティを保っている。アメリカの体質への批判を本作を通じて語るのと同時に、嫌われ者になってしまった人間の人生は誰が救ってくれるのか、そんな深いテーマがあったと感じますね。