「惡の華」 ★★★～青春は変態だ！

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2019』の掲載にあたって」

青春は変態だ！★★★

（2019年／日本／127分） 【　監督　】井口昇

【　原作　】

押見修造

惡の華コミック全11巻完結セット (少年マガジンコミックス)

5,191円

Amazon

【　出演　】伊藤健太郎玉城ティナ秋田汐梨飯豊まりえ鶴見辰吾黒沢あすか坂井真紀松本若菜高橋和也

【あらすじ】

　山々に囲まれたとある地方都市。中学2年生の春日高男は、この街の生活にどこか息苦しさを感じていた。

　ある日の放課後、教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を偶然見つけた春日は、衝動に駆られ、その体操着を盗んでしまう。その現場を目撃していたクラスの問題児・仲村佐和は、そのことを秘密にする代わりに、春日との主従関係を結ぶ契約を持ちかける。

　仲村からの変態的な要求に翻弄される春日。しかし、次第に仲村への魅力を感じ始め、アイデンティティが崩壊していく―

【コメント】

　さて、今回劇場で鑑賞したのは、『片腕マシンガール』や『電人ザボーガー』でファンになった井口昇監督待望の最新作。漫画原作の実写映画化ですな。

　いつものとおり、僕は原作を知りません。なので、情報全くなしのある意味良い状態で本作を鑑賞できたわけです。近年はブッ飛んだ映画より青春モノに注力している井口昇監督。尊家監督がどんな青春模様を描いているのか、『TOHOシネマズ府中』に足を運んだ次第です。

　いや～良かった！原作未読の中で感想を述べさせてもらいますが、通常の思春期を描いた小奇麗な青春モノとは違う、「青春は変態だ！」と井口昇監督が愛したのも納得の青春映画。これは、昨今乱造されている“胸キュン映画”へのアンチテーゼともいうべき良質の青春映画だと感じましたね。

　そうなんです、思春期って。あいつが好きこいつが好きと言いながらも、根底にあるのは結局のところ性欲。親の言うことも煩わしくなって、「もっと飛び出したい！自分はもう大人なんだ！」と独り立ちしようとする時期。そりゃあそうですよ、だって思春期だもん。人生で最も心体ともに成長する時期。あんなことやこんなことがしたい、そんな欲求が一番高まる時期なんです。それを変態と言われても致し方ない時期だし、それが許される時期でもあるんです。そんな時期、僕にももちろんあったし誰しもが経験することです。大人がやったら変態ですよ。

　本作からは、まだまだ未熟で考えが甘いクセに飛び出したい！大きく羽ばたきたい！もう何でもできる大人なんだ！という思春期ならではの大人への一歩をパワフルかつ痛いくらいに突き刺さるような内容で描いていると思います。自分の欲求を発散して、それで好きな人や周りの人間を傷つけ、心に傷を負いながらも、また一歩と成長を続けていく若者たち。好きだ嫌いだだけの胸キュン映画なんぞより、よっぽど突き刺さる映画だったと僕は思います。