「ホテル・ムンバイ」 ★★★★～無慈悲なテロリストの恐怖

　これは・・・凄いぞ！面白いぞ！テロリストにホテルを占拠され、そこから脱出するまでの過程を描いたシンプルな内容ながら、一瞬たりとも緊張が解けないサスペンスフルな展開と、こんなにも簡単に人を殺してしまうのかという無慈悲なテロリストという存在の恐怖を改めて感じさせられた極上の一品だったと思います！

　本作にはいちおう主人公的な存在はあるものの、実録モノを基にしているので、立てつけとしては群像劇であり、『ダイハード』のマクレーンのようなヒーローは存在しない。無慈悲なテロリストたちからとにかく逃げまどい脱出するまでの過程を描いている。そのテロリストたちの行動がとにかく恐ろしく、いくら神のため信念のためとはいえ、こんなにも容赦なく人を殺すことができるものなのか。ホテルに入るなり、老若男女問わずパンパンと人を射殺していく。部屋ひとつひとつ入っては、それが老人であろうが女性であろうが誰彼構わず射殺しまくる。フィクションによくある会話のやり取りなんて皆無、動いたら殺される、それだけシンプルで恐ろしい行動なんですね。

　実録モノとしながらも展開が絶妙で、キーパーソンとなる人間と思われるものたちがいとも簡単に死んでいく。死亡フラグが読めないんです。「え！？この人死んじゃうの！？」とか「こんなに簡単に死んでいいのか！？」とか。そんな予測不能な展開が本作をさらに緊張感あふれ面白くしている。惹きつけ方がとにかくうまいですね。

　考えてみれば、テロという行為に人道人権なんてものは皆無なわけで、逆に言ってしまえば、そんなことに惑わされるようじゃ目的は達成できない。テロリストは人にあらず、そんな人間的な心を封印し殺人マシーンとなってこそ目標が達成されるよう訓練された人たちなんですね。

　日本でテロ行為なんてのはありませんが、本作しかり世界各国で発生し未だ多く人たちが犠牲になっている中で、日本がこれほどまでに平和な国であることに我々は感謝すべきだと改めて実感します。