「ラストナイト・イン・ソーホー」　★★★★～めっちゃオシャレなオカルトスリラー

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2021』の掲載にあたって」

めっちゃオシャレなオカルトスリラー★★★★

（2021年／イギリス／115分／Last Night in Soho） 【　製作・脚本・監督　】エドガー・ライト【　出演　】アニャ・テイラー＝ジョイトーマシン・マッケンジーマット・スミスダイアナ・リグシノーヴ・カールセンマイケル・アジャオテレンス・スタンプリタ・トゥシンハムジェシー・メイ・リーカシウス・ネルソン

【あらすじ】

　ファッションデザイナーを夢見て、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学したエロイーズ。しかし、寮生活になじめずアパートで一人暮らしを始める。

　ある夜寝ていると、1960年代のソーホーの夢を見る。エロイーズは、歌手を目指す女性サンディとしてナイトクラブに自身を売り込んでいく。それからエロイーズは、夜ごと夢の中でサンディの追体験をするようになり、現実にも影響を与えはじめる。

　しかし、ナイトクラブの実力者にいいようにこき使われるサンディの夢を見るようになり、ついには殺されるところまで体験してしまう。さらに現実では謎の亡霊が出現し、エロイーズは徐々に精神をむしばまれていく―

【コメント】

　2021年度劇場鑑賞映画もあと数本を残すところ。その中でこれはぜひとも劇場で鑑賞しておきたいと選んだのが本作。傑作ホラーコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』や2017年の『ベイビー・ドライバー』で、そのスタイリッシュな作風で一躍有名になったエドガー・ライト監督の待望の新作です。

　映画マニアなら知らない名前ではない有名監督でありながら、残念ながら劇場館数が若干少なめ。そんなわけで今回は「TOHOシネマズ立川立飛」に足を運んで鑑賞した次第です。人気なのか、パンフレットがさっそく完売でした。

　いや～面白かった！ベースはいわゆるホラーでありつつも、スタイリッシュでポップでファッショナブル、ホラーのおどろおどろしさや気持ち悪さがほとんどない。エドガー・ライト監督のセンスがふんだんに込められた、とにかくオシャレなオカルトスリラーでしたね。最高に楽しめました。

　ファッションデザイナーを夢見てロンドンに出てきた田舎娘が、とあるアパートに住んで以来1960年代の夢と謎の亡霊に悩まされ、次第に精神が蝕まれていく。追い込まれながらも事の真相を突き止め、それが分かった時、哀しい過去の出来事を知ることになる。

　ストーリー的にはよくある物語ではあるものの、ゴテゴテでカラフルな着色や60年代の音楽などの演出が効果的に使われていて、とてもスマートでポップながらキッチュな雰囲気も漂う。あの着色のせいなんでしょう、華やかなショービジネスとそのドロドロとした裏側の色遣いがマッチしていて、エドガー・ライト監督のセンスが見事に反映されていてとても面白い。テイストはオカルトホラーではあるものの、ありがちなビックリ演出やグロ描写もなく、あくまで監督のセンスが前面に押し出されたファッショナブルなホラーなのでとても観やすいですね。

　本作を観て感じたことは、本作の製作の経緯としてハリウッドの昨今のMeToo運動の影響も多分にあったんじゃないかなーと。男がショービジネスを牛耳り、女性は権力者たちの愛玩としてしか存在しなかった60年代。色欲や嫉妬の渦に飲み込まれ夢破れて散っていった哀しい女性たちのストーリーが、現代になってこうして描くことができるようになった。

　まあ考えすぎかもしれませんが、ともあれ本作がエンタテイメントとして十分に面白かったことに間違いはありません。それにしても主役のアニャ・テイラー＝ジョイは実に可愛らしかったですな。これからの活躍に期待です。

【2021年度 Myランキング】（12/12時点）

　本作は、本年度の次点にランクイン。

　キャリーバッグも新調するか。

（ベスト）…　★★★☆以上が基準

　　１位：ファーザー ★★★★★

　　２位：サウンド・オブ・メタル～聞こえるということ～ ★★★★☆

　　３位：護られなかった者たちへ ★★★★☆

　　４位：孤狼の血 LEVEL2 ★★★★☆

　　５位：すばらしき世界 ★★★★

　　６位：ヤクザと家族 The Family ★★★★

　　７位：空白 ★★★★