「悪なき殺人」　★★★☆～よく出来ているが些か“偶然”に頼り過ぎ

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2021』の掲載にあたって」

よく出来ているが些か“偶然”に頼り過ぎ★★★☆

（2019年／フランス・ドイツ／116分／Seules les betes） 【　脚本・監督　】ドミニク・モル【　出演　】ドゥニ・メノーシェロール・カラミーダミアン・ボナールナディア・テレスツィエンキービッツ

バスティアン・ブイヨン

ギイ・ロジェ・“ビビーゼ”・ンドゥリン

バレリア・ブルーニ・テデスキ

【あらすじ】

　吹雪の夜、フランスの人里離れた寒村でひとりの女性エヴリーヌが失踪する。

　不倫関係にあったアリスと農夫のジョセフ、SNSで若い女性と秘密の交流をしているアリスの夫ミシェル、エヴリーヌと同性愛の関係にあった女性。

　それぞれに秘密を抱えた5人の男女の関係と、アフリカのコートジボワールをつなぐ偶然という名の真実が明かされていく―

【コメント】

　2021年鑑賞映画もあと数本。その中でこれはぜひとも観ておきたいと目を付けていたのが本作であります。

　本作は既に12/3に劇場公開が始まっており、最寄りの立川キノシネマでは遅れること12/17に公開ということだったのですが、劇場公開と同時に何やらデジタル公開でAmazonPrimeVideoでも観られるとのことで、せっかくだからアマプラで観るかと思っていた次第。公開とともに観ようと思ってたんですが、ズルズルと年末近くまで行ってしまい、テレワーク後この日しかないぜとアマプラで鑑賞しました。ちなみに、アマプラでも同じ1900円でした。

　うむ、これは面白い！とある片田舎で行方不明となった一人の女性を軸に、女性に関係する人たちの行動で真相が明らかになっていく。なんだろう、タランティーノの『パルプフィクション』のミステリー版とも言うべきでしょうか。登場人物を一人一人主役にした章構成で作られていて、さまざまな伏線を置きつつ後半に行くにつれて徐々に回収されていく。かなり綿密にシナリオを作ったんだろうという感じがありますね。もっとも、よく出来ているシナリオだと思うものの、些か“偶然”というものに頼り過ぎてるなという気はしましたが。

　オープニングでアフリカのコートジボワールのシーンがちょっと映ったかと思うと、急にフランスの閑静な山奥の寒村に切り替わり、行方不明の女性の存在と、何の関係もない他人事の住民のドラマが展開。もう冒頭の時点で謎を投げつけられるので、何の脈絡もない人たちが一体どう繋がっていくのか目が離せなくなる。不倫関係にある男女、行方不明の女性の遺体を見つけてしまった男、その女性と同性愛の関係にあった若い女の子、ネット恋愛に夢中な中年男。これらの人間が、何千キロも離れたコートジボワールの一人の男の“行動”と、奇妙な偶然によって振り回されていく。

　先にも言ったとおり、ちょいと偶然が過ぎる部分も数多くありましたが、それでもよく考えたもんだと観終わった後に感じましたね。

　ちょっとネタバレとなってしまいますが、本作は昨今の国際問題となっている所謂“国際ロマンス詐欺”が軸となっているもの。会ったことはおろか声も聴いたことが無いような人間と、よくもまあそんなポンポンとお金を出せるもんだと思いますが、ネット恋愛中毒は何も見えなくなっちゃうんでしょうかね。国際ロマンス詐欺という題材をミステリアスに描いた本作は、なかなか見せてくれて面白いです。

　ちなみに、もともとは『動物だけが知っている』というタイトルなので、効果的に動物が登場します。『悪なき殺人』よりもこっちのほうが良かったんじゃあないかとも感じましたけど。

【2021年度 Myランキング】（12/21時点）

　本作は、本年度のベスト10ワースト3ともにランキング外。

　また仕事がにわかに忙しくなる予感。

（ベスト）…　★★★☆以上が基準

　　１位：ファーザー ★★★★★

　　２位：サウンド・オブ・メタル～聞こえるということ～ ★★★★☆

　　３位：護られなかった者たちへ ★★★★☆

　　４位：孤狼の血 LEVEL2 ★★★★☆

　　５位：すばらしき世界 ★★★★

　　６位：ヤクザと家族 The Family ★★★★

　　７位：空白 ★★★★