「喰らう家」　★★☆～ラストで台無し、スッキリしない王道ホラー

※※※　注意　※※※
　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2015』の掲載にあたって」

ラストで台無し、スッキリしない王道ホラー

★★☆

（2015年／アメリカ／83分／We Are Still Here）

【　脚本・監督　】
テッド・ゲイガン

【　出演　】
バーバラ・クランプトン
アンドリュー・センセニグ
リサ・マリー
ラリー・フェッセンデン
モンテ・マーカム
スーザン・ギブニー

【あらすじ】

　一人息子のボビーを亡くした夫婦アニーとポールは、新たな環境を求めてとある田舎町の古びた一軒家に引っ越す。
　ある日、アニーは地下室から人の気配を感じ、それが息子の霊だと確信する。ポールの反対を押し切り、友人である霊媒師のメイとその夫ジェイコブを自宅に招き、息子の降霊を依頼する。
　しかし、地下室の霊から邪悪な気配を感じたメイは降霊を断るが、メイがいない間にジェイコブが降霊を始めてしまう。
　一方で、田舎町に住む住人達は、アニーの家のある秘密を隠し、アニーら夫婦の血を家に捧げようと企んでいた―

【コメント】

　本作を知った経緯として、『ムーン・ウォーカーズ』を観に新宿シネマカリテに足を運んだ際、館内のトイレに貼ってあったポスターに目を惹かれ「こりゃちょっと面白そうだぞ」と気に留めていたものです。
　1週間の限定上映だったため劇場での鑑賞は叶いませんでしたが、早くもDVD化されてレンタルに陳列されていたのでさっそく借りてみた次第です。

ラストで台無し、スッキリしない王道ホラー

　うーん、もったいないなー。安っぽさはありながらも、悪霊が棲む家という王道的なホラーかつ謎めいたミステリアスな展開もあって、結構いいところまで楽しめたんですがね。最後の最後でうやむやに終わらせてしまって、結果スッキリしないものになってしまいましたね。
　訳あり夫婦の哀しいドラマ、地下室に潜む邪悪な悪霊、それを知りながら夫婦を家の“生け贄”にしようとする街の人たち、そして土地に隠された秘密。題材としては揃っているし、クライマックスで隣人たちと入り乱れた血で血を洗う展開はなかなかに見せましたが、結局悪霊の目的がよく分からなかったし、何よりなぜ夫婦には指一本触れずに消えてしまったのかという説明も不足。死んだ息子と何か関係ありげな終わり方をしましたが、それもハッキリせず。喉に何か詰まったような感じでスッキリしませんでしたね。

霊能者夫婦まったく見せ場なし、何のために登場したのか

　ここで登場する、いかにも頼れるような霊能者夫婦。美しくてミステリアスな雰囲気を醸し出す奥さんに、粗暴で無骨だが何かやってくれそうな空気を持つ夫の、一見デコボコ夫婦なんですが、僕はまた「こいつらはいざ悪霊と対峙したら絶対何かやってくれる頼れる夫婦なんだ！」と期待しまくっていたんですが、夫は勝手に降霊して自爆し、美人妻は隣人に頭撃ち抜かれてあっけなく死亡という、結局家にケチ付けるだけ付けて何もせずに退場してしまうという体たらくぶり。お前ら何のために登場したんだ！？とツッコまずにはいられないキャラでしたね。
　もっと『死霊館』のウォーレン夫妻のような活躍を期待したんですがね、期待は大きく外れました。

ホラーとしては初心者向け、“黒コゲ幽霊”はインパクトあり

　そんなわけで、「ロッテントマトで満足度95％を記録した注目のホラー！」と謳った割には残念な出来だったと思いますが、ホラーとしてはビックリ展開もなくゴア描写もさほどの凄惨さはないハードルの低いものです。初心者向けですね。
　あえて褒めるとすれば、本作に登場する“黒コゲ幽霊”がなかなかのインパクトを持っていたということくらいですかね。体内がまだ炎で燻っているかのような姿は、なかなかに新しいモンスターの形だったと思いますよ。退屈しのぎに借りてみるには悪くないと思います。